一般的に植物は、同じ花に雄しべと雌しべが共存しています。
しかし、一部の植物では、雄しべまたは雌しべが欠けた花を咲かせることがあります。
雌しべだけの花を雌花、雄しべだけの花を雄花と呼びます。
植物が花を咲かせる主な目的は種子を作ることです。
通常、雄しべと雌しべが一緒にある方が受粉がしやすく、種子を効率良く作ることができると思われます。
では、なぜ雄花と雌花に分かれて咲く植物が存在するのでしょうか?
雄花と雌花に分かれる理由
植物の花は、その美しさや香りで虫を引き寄せ、花粉を運ばせることで受粉を助け、種子を残します。
このような特性は、種の継続を保証するために進化してきました。
しかし、雄花と雌花に分かれている場合、受粉するためには雄花の花粉が雌花に運ばれなければなりません。
これは虫にとっては余分な労力が必要で、そのため虫はこのような花を避けがちです。
また、多くの植物は自家受粉を避け、異なる個体からの花粉を受けることで、遺伝的多様性を持つ種子を作ることを望んでいます。
これが植物が有性生殖を行う本質的な理由です。
自家受粉を避ける必要性
生物が性別を持ち、有性生殖を採用する理由は、オスとメスの遺伝子を組み合わせることで、子孫に遺伝的多様性を与えるためです。
これが有性生殖の最大のメリットとされています。
一方で、無性生殖は環境が安定している間は非常に効率的ですが、環境の変化には脆弱で、種の存続に重大なリスクをもたらすことがあります。
このようなリスクを回避するため、多くの生物が有性生殖を選び、遺伝的多様性を高めています。
有性生殖は無性生殖に比べてはるかに複雑で手間がかかりますが、その労力を上回る利益を提供します。
結果として、遺伝的多様性を高めることができる種は、環境の変化に強く、地球上で持続的に生き残ることが可能です。
つまり、植物には、自家受粉を避ける戦略として雄花と雌花を分けて咲かせる種が存在しているのです。
これには雌雄同株の例(ベゴニアやキュウリ、トウモロコシ、クリなど)と雌雄異株の例(モクセイやイチョウ、ホウレンソウ、ホップ、キーウイなど)があり、それぞれが遺伝的多様性を確保するための異なる戦略を取っています。
自家受粉を避けるための植物の独特な戦略
1.雌雄異熟
一つの花に雄しべと雌しべが含まれる両性花において、雌雄異熟という現象が見られます。
これは雄しべと雌しべの成熟タイミングが異なることを指します。
たとえば、モクレンでは、花が開いた初期には雌しべのみが成熟し、雄しべは未成熟の状態で花粉を放出しません。
雄しべが成熟する時には、雌しべはすでに機能を終えているため、同じ花での受粉は起こりません。
キキョウでは逆の現象が見られ、花が開くと最初に雄しべが成熟し、花粉が尽きた後に雌しべが成熟します。
この雌雄異熟は、両性花を持つ植物が自家受粉を防ぐための一つの方法です。
これにより、雄しべと雌しべが同時に活動しないため、自家受粉が防がれます。
2.自家不和合性
雌雄異熟を持たない両性花の場合、雄しべからの花粉がその花自体の雌しべに付着することもあります。
しかし、被子植物の多くは自家不和合性というメカニズムを備えており、これによって自家受粉が防止されます。
自家不和合性は、雌しべの柱頭が付着した花粉を識別し、同じ遺伝情報を持つ自己の花粉を拒否し、異なる遺伝情報を持つ花粉だけを受け入れるシステムです。
一部の種子植物は自家受粉を容認する自家和合性を持ち、これが繁殖の容易さをもたらします。
例えば、シロイメナズナは自家和合性の特性を持ち、そのためにモデル植物として広く使用されています。
まとめ
植物の花は、虫を引き寄せて花粉を運ばせることで受粉を行い、種を残します。
環境が変化する際に、種が絶滅しないようにするためには、遺伝的な多様性が必要です。
この多様性を保持するためには、同じ個体内での自家受粉ではなく、異なる個体間での交配が求められます。
この目的を果たすため、雄しべだけを持つ雄花や、雌しべだけを持つ雌花を咲かせる植物が存在します。
また、両性花を持つ植物の中には、雄しべと雌しべの成熟する時期をずらすことによって自家受粉を避ける雌雄異熟という仕組みがあります。
雌雄異熟のメカニズムを持たない植物でも、自家受粉を防ぐための自家不和合性という機能を有するものもいます。
こうした様々な戦略によって、植物は雄花と雌花に分かれて咲く理由を持っています。
これらの仕組みは、植物が環境の変化に対応し、生き延びるために非常に重要なのです。