ここでは、プロ将棋の8大タイトル戦の序列や永世称号の制度について詳しく説明します。
将棋のことが詳しくない人も、将棋のタイトル戦について知っておくと、ニュースをもっと楽しめるようになるでしょう。
将棋の8大タイトル戦とその意義
将棋の世界では、プロの棋士たちが競い合う多くの大会があり、これを一般に「棋戦」と呼びます。
中でも最も権威のある8つの大会が「タイトル戦」とされています。
タイトル戦で勝利すると、優勝した棋戦のタイトルが名前の一部となります。
例えば、2021年11月の「竜王戦」で優勝した藤井聡太先生は「藤井聡太竜王(四冠)」と称されるようになりました。
ここで「竜王」というのがタイトルになります。
現在、以下の8つが将棋界のタイトル戦として認められています。各タイトルの保持者は以下の通りです。
タイトル名(ふりがな) | 保持者 |
---|---|
竜王(りゅうおう) | 藤井聡太 |
名人(めいじん) | 藤井聡太 |
王位(おうい) | 藤井聡太 |
叡王(えいおう) | 藤井聡太 |
王座(おうざ) | 藤井聡太 |
棋王(きおう) | 藤井聡太 |
王将(おうしょう) | 藤井聡太 |
棋聖(きせい) | 藤井聡太 |
現在は、藤井聡太先生が2023年10月11日の第71期王座戦の第4局で勝利し、歴史的な8冠を達成しました。
藤井聡太先生の8冠達成時の年齢は21歳 2カ月で、最年少かつ史上初の快挙です。
将棋タイトル戦の序列とランキング
将棋の8大タイトル戦には、それぞれ格式というか、独特な序列があります。
この序列は主に賞金額に基づいて定められています。
ここでは、それぞれのタイトル戦の概要を紹介します。
1.竜王戦(りゅうおうせん)
- 開催期間:10月から12月
- 賞金額:4,320万円
- 形式:7番勝負(先に4勝した者が勝者)
- 主催:読売新聞社
- 竜王戦は、名人戦と並び、将棋界で最も高い地位に位置づけられています。
2.名人戦(めいじんせん)
- 開催期間:4月から7月
- 推定賞金額:2,000万円
- 形式:7番勝負(先に4勝した者が勝者)
- 主催:毎日新聞社、朝日新聞社
- 名人戦もまた、竜王戦と共に将棋界の頂点とされるタイトルです。
3.王位戦(おういせん)
- 開催期間:7月から9月
- 推定賞金額:1,000万円
- 形式:7番勝負(先に4勝した者が勝者)
- 主催:ブロック紙3社連合(北海道新聞社・中日新聞社・西日本新聞社)
4.王座戦(おうざせん)
- 開催期間:9月から10月
- 推定賞金額:800万円
- 形式:5番勝負(先に3勝した者が勝者)
- 主催:日本経済新聞社
5.棋王戦(きおうせん)
- 開催期間:2月から3月
- 推定賞金額:600万円
- 形式:5番勝負(先に3勝した者が勝者)
- 主催:共同通信社
6.叡王戦(えいおうせん)
- 開催期間:7月下旬から9月
- 推定賞金額:300万円から600万円
- 形式:5番勝負(先に3勝した者が勝者)
- 主催:不二家と日本将棋連盟
- 叡王戦は、2015年に一般棋戦としてスタートし、2017年からタイトル戦に昇格。八大タイトルの中で最も新しいタイトルです。
7.王将戦(おうしょうせん)
- 開催期間:1月から3月
- 推定賞金額:300万円
- 形式:7番勝負(先に4勝した者が勝者)
- 主催:スポーツニッポン新聞社と毎日新聞社
8.棋聖戦(きせいせん)
- 開催期間:6月から7月
- 推定賞金額:300万円
- 形式:5番勝負(先に3勝した者が勝者)
- 主催:産経新聞社
- 棋聖戦は、夏に開催されることが特徴であり、その名の通り「聖なる棋戦」として位置付けられています。
最も格式が高いタイトルは?
では、将棋の8大タイトル戦の中で、最も格式が高いタイトルはどれでしょうか?
最も格式高いとされるのは、長い歴史を持つ「名人」と、最高の賞金額を誇る「竜王」です。
日本将棋連盟は、これら「名人」と「竜王」を同じランクに位置づけています。
しかし、「名人」タイトルは江戸時代の家元制度から続く深い伝統と格式を持っています。
また、プロ棋士にとっても名人戦(順位戦)は非常に特別な存在であり、竜王戦が創設された昭和末期には、「名人を超えるタイトルは存在しない」と考える棋士も少なくありませんでした。
長年の将棋ファンの中にも、「名人が最も尊いタイトルである」と強く感じている方が多くいます。
このような背景から、将棋界では「竜王が序列上位ではあるが、名人と竜王の2つが8大タイトル中で特別な地位にある」という見解が広く受け入れられています。
将棋の8大タイトル戦の永世称号詳細
将棋の各タイトル戦には、特定の条件を満たした棋士が「永世称号」を授与される制度があります。
これは、その棋士がそのタイトルにおいて卓越した実績を残した証とされ、スポーツ界の「殿堂入り」と同じイメージです。
以下、各タイトルごとの永世称号とその獲得条件、そして称号を保持している著名な棋士を紹介します。
タイトル名 | 永世称号名 | 条件 | 保持者 |
---|---|---|---|
竜王 | 永世竜王 | 連続5期または通算7期 | 渡辺明、羽生善治 |
名人 | 永世名人 | 通算5期 | 木村義雄、大山康晴、中原誠、谷川浩司、森内俊之、羽生善治 |
王位 | 永世王位 | 連続5期または通算10期 | 大山康晴、中原誠、羽生善治 |
王座 | 名誉王座 | 連続5期または通算10期 | 中原誠、羽生善治 |
棋王 | 永世棋王 | 連続5期 | 渡辺明、羽生善治 |
叡王 | 規定なし | – | – |
王将 | 永世王将 | 通算10期 | 大山康晴、羽生善治 |
棋聖 | 永世棋聖 | 通算5期 | 大山康晴、中原誠、米長邦雄、羽生善治、佐藤康光 |
「永世名人」の称号は特に重要で、江戸時代からの名人たちの系譜を引き継ぐ形で、「〇〇世名人」という形で称されることが一般的です。
これは棋士がそのタイトルを通算5期保持することで得られる名誉です。
例外的に、将棋界への貢献が特に顕著な場合、現役中でも永世称号を名乗ることが認められることがあります。
2018年には羽生善治が将棋界初の「永世七冠」を達成し、国民栄誉賞を受賞しました。
これは、叡王戦を除く全てのタイトルで永世称号を獲得したことを意味します。
以上が、将棋の各タイトルにおける永世称号の詳細と、その称号を保持している棋士の紹介です。
まとめ
将棋の8大タイトル戦は、ただの競技ではなく、日本文化の一端を担い、戦略と精神力が試される場であり続けています。
これらのタイトル戦を通じて、棋士たちはその技術を極め、将棋の世界をリードしていくことでしょう。